株式会社を設立すると、年に1度「公告」を行う義務があります。
以前、会社を設立すると赤字でも発生する法人住民税(均等割り)について記事を書きましたが、実はこの「公告」も同様で、たとえ赤字でも行わなければならず、その方法によっては数万円の費用が発生してしまうのです。
今回は、赤字でも株式会社が行わなければならない「公告」について解説していきます。
公告とは
公告とは、会社から株主などの利害関係者への通知・お知らせのことです。
公告の時期は、決算が確定後遅滞なくであって、時期は規定されていません。
冒頭で述べた通り、この公告は株式会社であれば赤字でも関係なく義務が発生します。
公告は会社法第440条の規定に基づいて、公告義務が定められており、また会社法第 976 条に罰則規定があり、決算公告を怠った場合100万円以下の過料に処せられるとされています。
しかし、上記の罰則はこれまで適用されたことがなく、公告を行っていない企業が非常に多いのが現状です。
公告の内容
公告の内容は主に「決算公告」ですが、それ以外にも以下のようなものがあります。
- 社名変更
- 本店(本社)移転
- 会社の吸収・合併
- 会社の分割
- 資本金および準備金の増減
- 組織変更
- 定款変更
- 株券等提出
- 解散
など、経営に関する重要な変更・出来事があれば公告が必要になります。
また、公告は会社設立時に作成した「定款」に記載した方法で行うことになります。
公告の方法
公告の方法は、以下の3種類となっています。
① 官報
官報は、国が発行している機関紙です。
独立行政法人である国立印刷局が発行しています。
決算公告の官報掲載費は、74,331円からとなっています。
会社の規模 | 最低料金の目安 |
資本金5億円未満・負債総額200億円未満 株式全部に譲渡制限有 | 74,331円(税込) 2枠 5,8㎝×6,1㎝ |
資本金5億円未満・負債総額200億円未満 株式に譲渡制限無 | 111,497円(税込) 3枠 8,7㎝×6,1㎝ |
資本金5億円以上・負債総額200億円以上 株式の譲渡制限関係無く | 148,662円(税込) 4枠 11,6㎝×6,1㎝ |
② 日刊新聞紙
日刊新聞紙であれば、その名の通り新聞に公告を行う方法です。
全国紙でも地方紙でも差し支えありません。
ただし、どの日刊新聞紙で公告を掲載するのか登記簿に定める必要があります。
日刊新聞紙は官報に比べ高額な費用かかってしまい、全国紙なら50万円以上もかかってしまいます。
そのため、この方法で公告を行っている企業はほとんどありません。
③ 電子公告
電子公告とは、インターネット上で公告を行うことです。
自社ホームページを持っていれば、ほぼ0円で公告を行うことができます。
しかし、その分電子公告を行うには以下の条件があります。
・決算書類の全文掲載が必要
官報か日刊新聞紙での公告であれば、貸借対照表の要旨のみの掲載で良いことになっていますが、電子公告では要旨ではなく全文を掲載しなければなりません。
つまり資産や負債、純利益の細かな科目を全て一般に公開することになるということです。
・公告を行うURLを登記簿に記載
電子交付を行うホームページのURLを、登記簿に明記し、法務局へ提出する必要があります。
URLを変更する場合は、再び法務局で登記変更を行わなければなりません。
・5年以上の掲載が必要
電子交付は5年以上掲載しなければなりません。
また、決算公告以外の公告をホームページに掲載する場合、正当な公告かどうか調べるため、調査機関の調査が必要になります。
決算公告以外の公告を掲載する場合は注意する必要があります。
公告は有価証券報告書の提出で省略できる
有価証券報告書(有報)は、決算公告で要求される開示事項とは比較にならないくらい詳細な情報が開示されているため、公告は有価証券報告書の提出をもって代えられます。
これは会社法第440条第4項によって定められています。
決算公告は電子交付、それ以外は官報がおすすめ
費用の面から、決算公告が電子交付、それ以外の公告は官報という選択をする企業が多く、また税理士や中小企業診断士もこの方法を推奨しています。
公告は株式会社のみの義務であり、近年増加している合同会社(LLP)は公告の義務がありません。
会社設立で株式会社を選ぶのであれば、公告の義務というものがあると認識しておきましょう。
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