【解説】株式会社vs合同会社どちらがいいの?

起業・独立

2006年の新会社法施行により、資本金1円からでも起業できるようになり、また日本で当時半分以上の割合を占めていた「有限会社」がなくなりました。

代わりに誕生したのが「合同会社(LLC)」であり、年々設立数が増加しています。

そこで今回は、「株式会社」と「合同会社」どちらで起業した方がお得なのか、どんなメリットがあるのかをご紹介していきます。

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新設法人における株式会社と合同会社の割合

東京商工リサーチによると、2018年に全国で設立された法人のうち、株式会社が68.1%, 合同会社が22.5%, 一般社団法人が4.7%だったそうです。

出典: 2018年「一般社団法人」の新設法人調査

新設法人のおよそ7割が株式会社のため、起業する=株式会社を設立するといっても過言ではありません。

一方、比較的新しい法人形態である合同会社も、設立の手軽さやコストの安さといった株式会社にないメリットが認知され始め、もうすぐ新設法人の4分の1を占める勢いとなっております。

株式会社と合同会社の5つの違い

株式会社と合同会社の違いは、大きく分けて5つあります。

下記の表で、違い5項目を見てみましょう。

 株式会社合同会社
設立費用高い安い
株式公開可能不可
議決権出資割合に応じた議決権一人一票
役員の任期原則2年(最長10年)なし
決算公告義務ありなし

それでは、上記の表の順に違いを詳しく見ていきましょう。

設立費用

合同会社は、株式会社の半分以下の費用で設立が可能です。

設立費用をざっくり計算すると、株式会社は約203,050円、合同会社は約63,050円です。

設立費用がこれほど違う理由は、定款認証登録免許税の違いです。

株式会社の場合、公証人役場という場所で定款認証を受けなければいけません。

その際に発生する費用が50,000円なのですが、合同会社は定款認証の必要がないため、この費用がかかりません。

また、法務局へ支払う登録免許税が株式会社は150,000円から(資本金の7/1000)なのに対し、合同会社は60,000円からと9万円も開きがあります。

このように、設立費用の面では合同会社が有利です。

株式公開

株式会社は、株を発行して外部から資金調達を行うことができます。

いずれば東証に上場したいと考えているなら株式会社がいいでしょう。

一方、合同会社には株式という概念がないので株式公開・発行はできません。

議決権

株式会社では、経営者と出資者が明確に別々になっています。

また、株式を多く所有する(出資額の多い)株主には多くの議決権が与えられるため、株主総会では大株主の意思が尊重されるのが常です。

一方、合同会社は経営者(社員)=出資者という形態となっており、議決権は(定款にて別途規定されている場合を除き)一人一票と平等に与えられます。

役員の任期

株式会社は役員に任期があり、任期を満了すると、株主総会で新たに役員を選出する必要があります。

役員とは取締役も含まれていますので、理論上、自分で設立した会社でも株主総会の決議次第で取締役を解任される可能性があります。

しかし、実際は大株主=社長というオーナー企業がほとんどなので、解任されることはほとんどありません。

会社法332条により、取締役の任期は原則2年とされていますが、定款に規定することで最長10年まで延長することができます。

取締役にまったく変更がない場合でも「重任」の登記を法務局で行う必要があります。

その費用として、7,000円(税別)+登録免許税10,000円が発生します。

一方、合同会社は役員に任期が存在しないため上記の手間とランニングコストが発生しないというメリットがあります。

決算公告義務

株式会社には、決算の公告義務というものが存在します。

公告こうこくとは、会社から株主などの利害関係者への通知・お知らせのことです。

株式会社は年に一回、決算公告を行わなければいけません。

公告は会社法第440条の規定によって義務付けられており、罰則もあります。

しかし、この罰則はこれまで一度も適用されたことがなく、実際ほとんどの中小企業は決算公告を行っていません。

ですので、株式会社と合同会社どちらかで悩んでいる場合、決算公告の有無は判断材料ではなく参考程度に考えておきましょう。

その他の細かな違い

株式会社の方が信頼度は高い

合同会社は、2006年5月の会社法改正で誕生した比較的新しい会社形態です。

そのため、「合同会社」という法人格はまだ完全には世間に認知されていません。

一方、「株式会社」は最も代表的な会社形態のため、一般的に知られており、会社としての信頼度が高いとされています。

合同会社の代表者は「代表取締役」と名乗れない

株式会社の代表者は「代表取締役」という肩書になり、当然この肩書を名乗ることもできます。

しかし、合同会社の代表者は「代表社員」という肩書となり、「代表取締役」と名乗ることができません。

銀行法人口座の代表者名も「代表取締役」ではなく「代表社員」となります。

「代表社員」という呼称は対外的に見れば威厳に欠けるため、合同会社のデメリットの一つとされています。

ちなみに、合同会社でも「社長」や「CEO」と名乗るのは可能だそうです。

おまけ:一般社団法人とは

一般社団法人は非営利法人、つまり利益を得ることを目的とした組織ではありません。

こちらは「一般社団法人及び一般財団法人に関する法律」という法律で活動内容が定められています。

2008年までは、設立に公益性が必要とされたために数が少なかったのですが、法律が施行されて以降は公益性がなくても一般社団法人として設立が可能になりました。

このため、公益性をもたない任意団体などが社会的信用を高めるために、一般社団法人として法人格を取得するケースが増加しているようです。

まとめ:好きな方を選びましょう

株式会社も合同会社もそれぞれメリットがありますが、税率等は全く変わりません。

そして会社を設立するうえで重要なのは事業であり、その事業で利益を上げることが最優先事項です。

起業家にとって時は金なりなので、法人形態で悩む時間はもったいないと思います。

また、合同会社⇔株式会社の組織変更も後から可能です。

なので気負うことなく、今回紹介した違いをパッと確認して、良いと思った方の法人形態で設立しましょう。

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