個人事業主やフリーランスと呼ばれる方の多くは、税務署に開業届を出しています。
開業届を出さなくても事業は行えますが、一体なぜわざわざ開業届を出すのでしょうか。
開業届を出して個人事業主になるメリットを見ていきましょう。
雑所得ではなく事業所得として計上できる節税メリット
個人事業主として開業届を出す最大のメリットは節税です。
「青色申告特別控除」という、個人事業主にならないと受けられない特別な控除があります。
転売やアプリ開発など、何か自分でお金を稼いだ場合、個人事業主として開業届を出していなければ雑所得、出していれば事業所得という区分になります。
青色申告特別控除により最大65万円の節税ができる
事業所得として計上できるということは、青色申告ができるようになるということです。
青色申告により、最大65万円の青色申告特別控除を受けることができます。
所得は、以下の10種類で区分されています。
- 利子所得
- 配当所得
- 不動産所得
- 事業所得
- 給与所得
- 退職所得
- 山林所得
- 譲渡所得
- 一時所得
- 雑所得
上記区分のうち、青文字で書かれている不動産所得、事業所得、山林所得の3種類は青色申告することが認められています。
また、最大65万円の青色申告特別控除を受けるには、以下3つの要素を全て満たす必要があります。
1.不動産所得又は事業所得を生ずべき事業を営んでいること
2.正規の簿記の原則(一般的には複式簿記)に沿った記帳をしていること
3.2の記帳に基づいて作成した貸借対照表と損益計算書を確定申告書に添付し、控除適用額を記載して法定申告期限内に提出すること
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2072.htm
一方、開業届を出していない方は、所得が雑所得として計上されるため青色申告控除を受けることはできません。
消費税の免税事業者になれる
以下の条件を満たす個人事業主は、消費税の免税事業者となります。
- 前々年の課税所得が1,000万円を超えていない
- 前年の1月~6月の半年間、課税所得が1,000万円を超えていない
- 給料総額が1,000万円以下を超えていない
以上の条件を満たしていれば、消費税はずっと免除されます。
例えば、個人事業主が5,000円の商品を消費者へ売る際、課税事業者の場合は5,000円+消費税10%(500円)の計5,500円で販売し、500円は税金として納めなければなりません。
一方、免税事業者であれば消費税を請求する必要がないため、5,000円そのままの金額で販売できます。
赤字を最大3年間繰り越すことができる
個人事業主となり、確定申告で赤字を計上した場合、その赤字は最大3年間繰り越すことができます。
例えば、今年の確定申告で50万円の赤字を計上し、次の年に200万円の利益が出たとしたら、繰越損失50万円を差し引いた150万円が課税所得となります。
屋号で銀行口座の開設ができる
個人事業主として開業すると、屋号で銀行口座の開設をすることができます。
例えば、個人で「Aショップ」という通販サイトを運営しているとしましょう。
通販サイトということは、商品の購入者に商品代や送料を振り込んでもらうための口座情報を提供する必要があります。
その口座名義が個人名だった場合、不信感や警戒心が働いて振込に抵抗を感じてしまう方がいるかもしれません。
Amazonや楽天など大きなショップに出店しているならともかく、個人で運営されている通販サイトで支払口座名義もザ・個人って感じだと不安を感じてしまいますよね。
ですが、屋号名の「Aショップ」が口座名義であれば信頼性が増すため、顧客を逃す機会も少なくなるはずです。
開業届を出さなくても罰則はない
事業を開始した1ヶ月以内に開業届を税務署に提出しなければならないと所得税法で定められてはいますが、開業届を出さなかったからといって罰則はありません。
開業届の提出は義務なのです。
開業届を出さないと事業者は社会的信頼度は最低
新規事業者、新入社員の社会的信頼度は
個人事業主 < 法人 < 会社員
となります。
新規事業者は、新卒の会社員と設立したばかりの法人よりも信用度が低いため、クレジットカードや融資の審査で苦労する可能性が高いと言えます。
もし、開業届を出していない場合は無職と同じ扱いとなるため、個人事業主よりさらに信頼度は下がります。
個人事業をされる方は開業届を出したほうが節税・信頼のメリットを受けることができるので、出すことをおすすめします。
コメント