株式会社を設立する前に決める重要事項一つに「発行可能株式総数」があります。
1株の価額を決め、発行済株式総数・発行可能株式総数について定款と登記簿に記載しなければなりません。
この発行可能株式総数をテキトーに決めてしまうと、後々面倒なことになってしまいます。
結論:設立時の株式発行数は1万、発行可能株式総数は4万か10万がおすすめ
設立時の株式発行数は1万とし、発行可能株式総数は将来的に株式公開・上場を目指しているなら4万、非公開会社のまま株式公開する予定がないなら10万がおすすめです。
多くの場合、スタートアップ初期は「非公開会社」から始まります。
株式を外部へ公開する「公開会社」は、発行可能株式総数は既に発行されている株式の4倍までと決まっているので、「公開会社」を目指すなら4万、「非公開会社」のまま公開する予定がない場合は10万にしておけば、しばらく困ることは無いでしょう。
発行可能株式総数は、細かい方が資金調達や人材調達に都合がいいのです。
資金調達がそこまで必要ない事業だとしても、発行可能株式総数を細かくして損はありません。
発行株式数が少なすぎると起きる問題
発行株式数が少ないと、株式を用いた資金調達・人材調達が計画的に行えなくなってしまいます。
昔は1株5万円以上と決められていましたが、2001年6月の法改正で株価を自由に決められるようになりました。
現在では1株1万円というのが一般的らしく、会計ソフトで有名なfreeeのヘルプセンターでも「一般的には、1万円を指定します。」と記載されています。
この「1万円」や「5万円」といった1株当たりの金額を参考にしてしまうと、会社設立時の発行株式数が非常に少なくなってしまう可能性が高いのです。
これにより、以下の2つの問題が発生する場合があります。
エンジェル投資家が現れた場合
発行済株式数が少ないと、エンジェル投資家が現れた際の交渉が困難になるでしょう。
仮に資本金100万円で起業し、1株5万円に設定したとします。
その場合、発行株式数は20株となります。
1%の株式と引き換えに100万円投資してくれるというエンジェル投資家が現れたら、一体どうなるでしょうか。
20株中の1%ということは、0.2株渡せばいいと思った方がいるかもしれませんが、残念ながらそれはできません。
1株を割って分配・譲渡することはできません。
1株は1株です。
つまり、0.1株や0.5株といった株式の渡し方はできないということです。
0.1ビットコインだけ保有するといった小数点以下で取り扱い可能な仮想通貨とは違い、株式では原則不可となります。
株式の譲渡やストックオプションで社員を確保する場合
発行済株式数が少ないと、株式の譲渡やストックオプションによる人材確保が困難になるでしょう。
優秀な社員を雇い入れるため、スタートアップ企業は株式の譲渡やストックオプションとった手法を取ることがあります。
まず株式の譲渡ですが、「うちの会社に入ってくれたら発行済株式の0.1%をあげる!」といった交渉を行いたいのに、発行済株式が20株しかなかったらどうなるでしょうか。
20株のうちの1株は、発行済株式総数の5%にあたります。
いくら優秀な人材でも、いきなり5%の株式を譲渡するというのはあまりに無計画と言えます。
また、「うちの会社に入ってくれたら、自社株を1株1000円で3年間1000株まで買っていいよ!」といったストックオプションの権利を条件に人材を雇い入れる際、発行済株式が20株しかない場合は大変なことになります。
極端な例ですが、あっという間に株式を買われて経営権を奪われかねないため、ストックオプションを条件に人材を集めることが難しくなってしまいます。
「公開企業」と「非公開企業」の発行可能株式総数ルールの違い(4倍ルール)
株式の譲渡を自由にできる「公開会社」では、発行可能株式総数は既に発行されている株式の4倍を超えることができません。
つまり、既に発行している株式数が1000株であったなら、発行可能株式総数は4000株以内にしなければならないということです。
しかし、新規法人の株式会社のほとんどは「公開会社」ではなく、株式の譲渡に会社の承諾を必要とする「非公開会社(譲渡制限会社)」です。
「非公開会社」には発行可能株式総数の上限はないので、4倍どころか1000倍にすることができます。
逆に、既に発行している株式数と同数にするということもできます。
しかし、発行可能株式総数は定款と登記簿に必ず記載する事項であるため、既に発行している株式数と同数にしてしまうと、増資のために株を発行する度に、定款変更の株主総会の決議をしなければならなくなりますので注意しましょう。
そもそも、なぜ発行可能株式総数を決めなければならないのか
発行可能株式総数を定める理由は、株主を保護するためです。
株式会社というのは、会社を所有しているのは株主で、株主が取締役に会社の運営を委託するという構造になっています。
多くの中小企業は株主=代表取締役なので問題ありませんが、公開会社として事業を運営していると、色々な場面で追加の資金を調達する必要が出てきます。
そして株式会社は、株式を発行して資金を調達するという方法があります。
株式発行を上限なく無制限にした場合、既にその会社の株主の持ち株比率が低下してしまい、会社に対する影響力が小さくなってしまいます。
例えば、会社の10%の株式を保有していたのに、ある日の株主総会で発行する株式を10倍に増やすことが決定されてしまった場合、その株主は会社への影響力が10分の1になってしまいます。
これでは、株主が困ってしまいますよね。
そこで、事前に発行可能株式総数を定款で定め、法務局で登記(登記簿に記載)する事により、株主は発行済株式総数と発行可能株式総数を知ることができます。
これにより、今後どれだけ株式が発行される可能性があるのか、今後自分の発言権がどれだけ小さくなる可能性があるのかを事前に知ることができるのです。
公開会社=上場会社ではない
誤解されることが多いのですが、公開会社=上場会社ではありません。
公開会社とは、株主が会社の承認なしに自由に譲渡できる株式を発行している会社のことをいいます。
一方で上場会社とは、公開会社の中でもその会社の株式が自由に売り買いできる証券取引所(東証やマザーズ)で売買されている会社を指します。
「株式の譲渡制限に関する規定」の設定
会社設立をするときに、忘れずに検討した方が良いことのひとつとして、株式の譲渡制限を設けるかどうかが挙げられます。
株式の譲渡制限を設けるためには、定款と登記簿に記載する必要があります。
これを設けることで、株式が知らないうちに第三者の手に渡ることを防ぐだけでなく、役員の任期を10年まで延長できたり、取締役会を設置しなくてよいといったメリットがあります。
まとめ:株式の管理は経営においてとても大切
設立当初はお金がなく、資金調達まで頭が回らない経営者も少なくありません。
ネットで『1株「1万円」か「5万円」が一般的』と書かれているからといって、安易に発行可能株式総数を決めないようにしましょう。
後から株式で資金調達することを考えた時、後悔するかもしれません。
発行可能株式総数を変更する場合、株主総会や登記の手続き・費用といった手間が発生してとても面倒だからです。
株式会社を設立する前に、自社の株式をどう活用していくのかある程度計画を立てるようにしましょう。
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